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雅の治めているのは小さな街、エラフィタ。基本的に朗らかで平和なので、住民も目立って不満を示したりはしていない。
……まぁ、そのおかげで他の契約者から反感を買っているのだが。
雅はまだ若く、本来ならばまだ見習いの筈なのだ。しかし史上最強で有能で、さらに逆月家の者なのだからと特別に契約者としての試験を受けさせてもらえた。
ましてや最少年なのだから、反感を買うのも仕方ない。
しかしまぁ、面倒臭い。何と面倒臭い。一々周りにやたら気を使わなくてはいけない。
人間みな、古竜みたいにさっぱりした性格ならば良いのに。
雅は深々と溜め息をついた。
「もうだるい」
「シャキッとしなさいよ、だらしないわね!」
曲がり気味の背中を松梨に叩かれ、雅は仕方無く背を伸ばす。
「じゃあ、俺達戻るからな。なんかあったら呼べよ?」
「はーい」
霧香に気の抜けた返事をすると、古竜達は光の姿へと変化していく。そうして雅の首に下げられたネックレスに、光の波が流れ込む。
全ての光がネックレスの中に入ったのを確認してから、雅はエラフィタまで行けそうな馬車を探した。
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