護り樹の絵

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とおいとおい昔のお話。 小さな小さな村のお話。 その村は大きくて立派な樹に護られています。だから、毎年村一番の絵描きがその樹の絵を描き、捧げることになっていました。 そして今年もまた村の護り樹に絵を捧げる季節になりました。 しかし、村一番の絵描きは事故で亡くなってしまいました。村の少年が木登りをして降りられなくなっていたのを助ける時に、絵描きは足を踏み外してしまったのです。少年は無傷で助けられましたが、絵描きはその下敷きになって息絶えました。 絵描きには一人の娘がいました。その子は絵描きから、手を取って絵の描き方をすべて教えられていました。絵描きの娘は、父親にも負けないくらい絵が上手でした。しかし、彼女は生まれた時から目が見えませんでした。絵の技術はよく知っていても、絵で描く風景は知らないのです。 それでも護り樹の絵は完成させなければならないので、村中の人が絵描きの家へ詰めかけました。父親を亡くした少女は悲しくて泣きはらした目で、おびえながら村人たちを見つめています。 お隣のおばさんが、この子に絵を描いてもらおう、と言います。 しかし村長が、本当に描けるのか、と問いかけました。 また別の村人が、なら試しに何か描かせればいい、と言いました。 少女はその言葉に従って、おどおどと絵の具の準備を始めます。転ばないように注意して、家の奥から画材を持ってきました。そしてキャンパスを立てかけて、筆を取ります。
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