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しかし、少年は諦めないで、と少女に返します。
護り樹に絵を捧げることは、とても大切なことだから誰かがやらないといけない。
キミの絵はすばらしいから、これほど護り樹にふさわしいものはない。
だから諦めないで描いてほしいと、少年は少女に言いました。
必ず、絵の具の原料を持ってくると、少年は少女の家を飛び出しました。
少女は開け放たれた扉の音を聞いて、しばらく呆然としていましたが、我に返ると新しいキャンパスを取り出しました。この村のために、父の誇りのために、そして少年のために、護り樹の絵を完成させようと少女は決意しました。
それから数日経っても少年は帰って来ませんでした。それでも少女は少年を信じて、自分のやれることを続けました。
毎日毎日少女は護り樹のもとに訪れて、幹に触れて、葉の音を聞いて、その存在を自分の心に思い描きました。
村人たちは、止めるでもなく、支えるでもなく、その少女の姿を遠目に見詰めていました。村人も、少女が村で一番よい絵を描くと気付きながら、しかし、少女は目が見えないということに不安を抱いているのです。
ある日、少女のお世話をしてくれているお隣のおばさんが、晩ご飯のついでに少女に話をします。
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