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アタシは揺らされて、しばらく置かれたと思ったらまた揺らされ、とにかく彼が移動しているのがわかった。
随分長距離みたいだ。
一刻も早く、この袋から出て、箱の中でくくりつけられた針金を外して欲しかったアタシは、今か今かと外へ出る時を待っていた。
「パパー! おかえり!」
買われてから何日も経った時。
アタシの待ち望んだ日がやっと来た。
舌足らずな高い声が袋のせいでくぐもりながらもはっきり聞こえてきたの。
「ルカ、良い子にしてたか?」
「してたよ! ママのお手伝いもちゃんとやったよ!」
「そうか、偉いなあ」
彼の嬉しそうな声が聞こえた後、ジッパーが開いた。
眩しい光が袋の口から差し込む。
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