天使に起因する2つの白昼夢

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 物音。  老教師は眼だけを素早く隣室に向けた。第二の音を待ったが、何も起こらないのでそっと腰を上げる。  隣の美術室へと続く扉を開き、中を窺ってみると、画架が倒れている。立てかけ方が悪かったのか。老教師は室内を見回したあと、その画架をまた壁に立てかけて、書斎に戻った。それからすこしの間、隣室が気がかりだった。しかし気にしないことして、また雑誌に目を戻す。  一行も頭に入らないまま予鈴が鳴り、仕方なしに老教師はフロックコートを羽織って、書斎から出て行った。  老教師が行ってしまったあと、陳列棚の陰からそっと姿を現したその女生徒は、足早にこの室を出て行くのだった。 ●美術室には、老教師が海外で買い求めた天使人形が置いてある。女生徒はこの天使人形を見るために、毎日美術室へ忍び込んでいる。 ●その年の冬、冷たい美術室で気絶している女生徒が発見される。幸いにも大事には至らなかったが、なぜかその場には純白の羽根が散乱しており、天使人形が消失していた。何があったのかと訊ねても女生徒は黙ったまま。 ●冬の訪れ。 ●……。  
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