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2018年7月9日
「おはよう、偽裏(いつわり)くん。」
誰かの声で俺は目覚めた。
どうやら俺は夢を見ていたようだ。
それも3年前の出来事の夢。
目を開けると、体育館裏に広がる雑木林があった。
俺はこんな衛生面の悪い場所で寝てたのか。
自分は再度目をつぶり、記憶を辿っていく。
確か今日の3限目にかなり多くの課題を提出しないといけなかったので昨日は徹夜をしてしまい寝不足だった。
それで当たり前だが昼休みに無性に眠たくなって、教室で寝ようと思ったが野球部の連中がガヤガヤやっていたから、静かな体育館裏で寝ようと思ったのだ。
目を開け左腕につけていた銀色の腕時計を見る。
しまった。もう時間は5限目の時間に突入してしまっている。
俺は深いため息をついた後、雑木林をボーッと眺めた。
さて、どうしようか。
確か今日の5限目は現国の小早川だ。俺の嫌いな先生の一人。
あいつに絡まれると面倒だからな。まあ、どうせ俺は今ごろ体調不良扱いだろう。テスト前ではないし一日ぐらいサボるのも、いい経験だ。
「何、考えてるんだい?」
え!?
突然右から声がして、自分は一瞬たじろいた。
「真宮………」
撫で肩で童顔、だが考えている事は顔に似合わずイカれてる。
そんな学校一の奇人が横に座って本を読んでいた。
「驚いた?」
真宮は人懐っこい笑みを顔に浮かばせ、視線を俺に向けた。
「ごめん、驚いた。」
「いいよ。しょっちゅうだし、俺って空気だから」
一気に笑みが無表情に変わり、また視線を本に戻す。
何を読んでるのか気になって表紙をチラリと見る。
『拷問』
見て不快感を感じるタイトル。
いかにも彼らしい本だ。
そう思ってると、急に彼は「俺らしいかい?」と目線を変えずに本を読んだまま俺に問いかけた。
こいつ、心を読めるのか。
どうやら彼には超能力的な何かが備わっているらしい。
俺が、まいったなあと口にすると彼は女みたいにクスクスと笑った。
真宮が奇人と称される理由の一つ。勘で相手の考えている事を九分九厘だいだい当てる事ができるのだ。
それだけなら、むしろ忌むべき事ではないのに、なぜ彼は奇人と呼ばれるのか。
こんな話がある。
ある女好きで有名な、Yという男子生徒の話だ。
彼は当時二股をかけるなどして、〈たらし〉という名を馳せるほど女好きだった。
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