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2-7
「そんなことない! アルスさまは一族のことだけじゃなくて、天のこともイザエラ族のことも、いっぱい考えてる。みんながひとりでも幸せになれるようにってがんばってるのに、そんな言い方っ」
頭の上に、老女の手がのせられた。
「ほんと、いい子だねえ。長が天から連れてきちまった理由が今よおくわかったよ」
じゃあ着替えてくるからね、と老女が歩きだす。
後ろからついてきた嫁を、あんたの手は借りないよ、とすげなく追い返した。
「いつもあんな感じ?」
「…ええ。仕方ないのよ。私、まだ子供ができないから」
「そんなに悪いこと?」
「一族の女性の価値はね、子供を産めるかどうかなの」
「…ずいぶん…何と言うか…変な価値観なんですね」
「ありがとう。外から来た人にそう言ってもらえると、楽になるわ」
女性が微笑んでくれた。
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