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エピローグ
居城への帰り、アルスはいつもセリューナの家のそばを通ることにしている。
彼女が畑にいる可能性の高い時刻なら、あえてそちらを見ないようにするのだが、今は違った。
陽が傾き、あるものすべてが緋色に染まっているので、夕食の準備のため、家の外にいるわけはない。
会っていくつもりも話すつもりもないのだが、何となく馬を動かせずにいた。
観賞魚、と言ったウィンシアの台詞がよみがえる。
見ているだけで満足できるなら、連れてきたりはしなかった。
不意に家の扉がひらく。
あわてたように出てきたのはセリューナだった。
しかし、こちらに気づく様子はなく、すぐそばの畑から葉野菜を収穫している。夕食の材料が足りなかったのだろうか。
「セリューナ」
想いより早く、声をかけていた。
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