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18-2
気づいたセリューナが大あわてで近づいてくるのを見て、アルスは馬から降りた。
「あの、…何かあったんですか」
彼女はまだ、この想いの深さを、しらない。知れば、きっと逃げだしてしまう。
冷たい風がふき、ざわざわと草が音をたてる。
「いや……」
言葉がうまれてこない。
寒そうにセリューナが肩をふるわせる。観衆の目がないことを幸いに、抱きしめてやろうと一歩を踏み出すと、
「あ、そうだ。ちょっと待っててくださいねっ」
いきなり何かを思い出したように、家に戻ってしまう。かと思うやすぐに、やや歪んだ形をした籠を手に、戻ってきた。
「やっぱり笑い話にされるのは嫌だから、がんばってみましたっ」
差し出した手に、ちいさな傷がたくさん見えた。
彼女は何を思い、籠編みを覚えようとしているのだろう。嫁は籠編みができるべきだという凝り固まった価値観しか持たない一族の男へ嫁ぐためか。
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