エピローグ

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18-3 「ウィンシアの言葉を気にしているだけなら、もうやめろ」 「うん。…そうだよね。でも、アルスさまに近づく方法が、もうこれしかないような気がして」  おかしいよね、とセリューナがうつむいた。  反射的に手をのばしてしまう。  おとがいに指をかけ、強引にうわむかせる。  琥珀色の瞳が不安そうにゆりうごき、夕陽に照らされた頬が紅に染まる。 「あの…」  ちいさく、くちびるが動く。  ただの一度だけ、そこへ触れたことがあった。  まだこれほどの感情に気づいてはいなかったから、できたこと。  いま、軽はずみにそんなことをしたら、このまま連れ去って、どこへなりと閉じ込めてしまいたくなるだろう。  いや、こうして見つめているだけでも、その気持ちは増幅している。 「もう家に戻れ。日が暮れる」  視線を外し、指をはなした。
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