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3-7
「あの、あまり発破かけないでやってくれんか。まだ傷の浅いうちに忘れさせてやったほうが……」
「父親はこれだからねえ。あんたの娘、見る目はあるよ。一族最高の男に惚れたんだからね。ただちょっと現実が見えてなかったかなーあ」
「ひどいよ、おばあさん……」
それは、言われるまでもなく自分がいちばんよくわかっている。
「長にはね、幸せになってもらいたいんだよ。みんーなそう思ってる。でもそれは逆に言うと、幸せになった長が少ないということさ」
アルスさまが長になったのは、もう誰も死なないでほしいから。たったそれだけの思いを抱えて、彼は長になった。
自分が幸福になるよりも、一族のことを思って。
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