1 拒絶

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4-2  彼女を利用されるわけにはいかない。  いや、もとより手放すつもりはないのだ、彼女のことだけは。 「セリューナ…」  居城に住まわせてもよかったが、外部との接触に制限をつければ、天の娘に対する一族の興味がふくらみ、いらぬ騒動に巻き込む危険性もある。  そうすればまた地下牢へ入れねばならない事態にもなりかねない。  そんなことは、もう二度とさせたくない。  だからこそ、ここから少し離れた城下に家と畑を与え、多くの一族の目がゆきとどくようにした。  そうすることが一番の解決法だった。  しかし、距離を置いてしまったために、仕事に追われる自分が彼女に会うことはなくなってしまった。  視察の行き帰りに姿を見かけることはあっても、部下を引き連れているため、声をかけることもできない。  そんなことなら見えないほうが楽だ。
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