1 拒絶

24/28
前へ
/146ページ
次へ
4-6  昨日の雨は夜のうちにあがり、朝は水を含んだ冷たい空気に包まれていた。  そんな中、セリューナは老女から借りた馬に乗り、ゆっくりと歩かせていた。  老女に指摘されたとおり、長の居城へ行くことを明確に禁じられはしなかったが、長という立場にいる彼に、ただ会いたいから、という理由だけで会いに行くことは何となくできなかった。  だが、今日は手紙を届けるという名目がある。  乗りなれない馬が水たまりをよけるために、本来はまっすぐな道をふらふらと歩く。  荷馬車が通ったあとの水たまりは茶色く濁っている。どうやらその泥はねが気に入らないらしい。 「あなた、さては荷運びなんてしたことない馬でしょ」  もしかしたら、もともと競争馬か何かだったのかもしれない。年老いて、あまり早くは走れなくなった馬を、農作業用にと引き取ったのかも。
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加