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4-6
昨日の雨は夜のうちにあがり、朝は水を含んだ冷たい空気に包まれていた。
そんな中、セリューナは老女から借りた馬に乗り、ゆっくりと歩かせていた。
老女に指摘されたとおり、長の居城へ行くことを明確に禁じられはしなかったが、長という立場にいる彼に、ただ会いたいから、という理由だけで会いに行くことは何となくできなかった。
だが、今日は手紙を届けるという名目がある。
乗りなれない馬が水たまりをよけるために、本来はまっすぐな道をふらふらと歩く。
荷馬車が通ったあとの水たまりは茶色く濁っている。どうやらその泥はねが気に入らないらしい。
「あなた、さては荷運びなんてしたことない馬でしょ」
もしかしたら、もともと競争馬か何かだったのかもしれない。年老いて、あまり早くは走れなくなった馬を、農作業用にと引き取ったのかも。
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