プロローグ

4/5
9人が本棚に入れています
本棚に追加
/146ページ
1-3  命を救い、少ないながらも食事をさせ、一族とうまくやってゆけるよう過去の償いとして仕事まで与えてやっているのに、何が不満なのか。 「いえ、夕餉の用意ができましたので食堂のほうへいらしてください」 「ああ…、そうか。悪いが私の部屋へ運んでくれ。今はあまり食欲がないから、気が向いた時に食べる」 「雨に当たられてるからですよ。お風邪を召します」 「天候が気になっただけだ。私のことはいいから、先に喰ってこい」 「長をさしおいて私が先に食事を摂るわけにはいきません」  アルスは吐息した。  どうせ気を遣うなら先に喰ってくれたほうがいいんだが、こういう言い方をされると、レイリューンのために嫌でも自分が食事をしなければならなくなる。 「……わかった」
/146ページ

最初のコメントを投稿しよう!