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私室に運ばれてきた食事は、一族の主食となっている小麦で作られたパンと、さまざまな野菜と香辛料で味つけされた鶏肉。長時間かけて煮込まれ、その形さえなくなってしまった芋のスープ。
一族の長が食べるものとしては質素だが、それでも見た瞬間にもう体の中がやめてくれと叫んでいるようだった。
これは喰えそうにないな、と仕方なく先に水を口にする。
どうにか嚥下したが、気持ちの悪さは変わらない。
これはちょっと本格的に体調を悪くしかけているかもしれない、と思った瞬間、胃からせりあがってくる異物感をとめることができなかった。
「フェシルミアさま!」
「…悪い。ああ、そんなことはいいから」
汚れたものを拭きとるレイリューンに声をかける。
「医師を、呼んでくれ。たいしたことではないが、念のためだ。それと、このことは誰にも喋るな」
「……はい」
誰にも。
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