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松下の言うとおりで、松下は何も悪くない。
それは私が1番知っている。
こんなの私の勝手な嫉妬じゃない。
「…ずるい」
私が1番悪いのに、松下に八つ当たりする。
それなのに、松下はなにも言わない。
ずるい。
どうしようもなく子供な私をこんな優しく正面からぶつかって、抱え込んでくれるなんて、本当にずるい。
「松下はずるい。
そんな風に言われたら、嫌いになんてなれない…よ」
ずるいけどずるくない。
ずるくないけどずるい。
矛盾した思いがぐるぐる回る。
《そうだね。俺はずるいよ》
松下が自嘲気味に悲しそうに言うから私は口を滑らせる。
「松下は、ずるくないよっ!」
思ったよりも大きな声がでて慌てて、あ、と口をふさぐ。
《矛盾、だね》
「う、うるさいよ」
不機嫌に言うと、松下は少し笑って
《でも俺がずるいのは本当だよ》
と言う。
なんで?と、私が疑問を口にする前に松下は言葉を続ける。
《大体、七に電話するのも、そう》
余計に意味がわからない。
この恒例となった早朝の電話に何か理由があるというの?
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