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《七は騙されてるよ。俺のことをずるくないって言う時点で相当騙されてる》
訳が分からなくて何も言えない私に構わず、松下はまた言葉を重ねる。
《七は俺のこと、お調子者ぶってるけど本当は誰よりも冷静にその場を見てて、気を配れる人、とか思ってるだろ》
自分で言うな、と思いつつ、だけどそれは当たっていて、私は、なんでわかるの、とこぼす。
《ほら。
それが騙されてるって言うの。
俺そんな大人じゃないもん。
俺は自分の都合のいいように、人ころがしてるだけ。
俺の行動は全部、俺のため》
みんなの利益を、なんて思ってないよ、と笑う。
…じゃあ、この電話は?
このいわば恒例となった早朝の電話は?
自分の鼓動が速くなっていくのがわかる。
「…じゃあ」
《ん》
いつもの、聞き慣れた声のはずなのに、いつもより優しく感じるのは私の都合のいい解釈?
それとも、
何か理由があるの?
心臓が痛いくらいドキドキして、声が震える。
「…どうして毎朝電話するの?」
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