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――俺は、犯罪者を“狩っているんだ”。
次の瞬間、スキンヘッドの頭が二つ、宙を舞った。
その機能を失った胴体が机にもたれるように倒れ、机の上にあった酒瓶とグラスが床に落ちて割れた。
店の中に居た他の客が、音の方を見たが、悲鳴を上げたりはせず、またすぐ自分たちの話をし始めた。
犯罪を犯して逃げ続ける彼らには、人の死など、見慣れたものだったからだ。
だが、彼らは行動すべきだった。武器を取ってフードの男と対峙すべきだった。
なぜなら、フードの男は、「自分は犯罪者を狩る者だ」と言った。声が小さく、聞こえなかったのだ。ならば、彼らはこの男に“狩られる”対象ではないか。
フードの男は、何事も無かったかのように無言で立ちあがると、元のカウンター席に戻った。
「あちらのお客様と何か揉め事でも?」
カウンターの内に居た店主が、グラスに入った酒を飲みほして一息つく男に、話し掛けた。
店主は、まだ幼さ残る顔に、白いシャツを着て、黒いズボンと黒いベストを羽織っている。首には赤い蝶ネクタイをしている。
「えぇ、ちょっと……」
店長には無関係だろう……。そう判断した男は、自分の正体を伏せた。
「アレ、申し訳ありません」
男の言う“アレ”とは、未だに血を流し続ける二つの死体のことだ。
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