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「構いませんよ。あとで外に埋めておくので」
店主は、男の方を一度も見ず、洗い終わったグラスを磨きながら、答えた。
「いや、せめて酒代とグラス代だけでも」
男はそう言って、懐の財布を取り出し、中から金貨を数枚、カウンターに置いた。
それを見て、店主が初めて動きを止め、男の方を見た。いや、正確には金貨を見た。
「こんなにいただけませんよ。一枚で十分です」
「いや、アレを埋める手間賃と、一瞬でも場を白けさせたお詫びです」
「……そういうことなら、頂いておきましょう」
店主は金貨を受け取ると、レジスターに入れた。
「ところで店主。この辺りで星屑について聞いたことはないか?」
男は氷が入っただけのグラスを傾けながら、再びグラスを磨き始めた店主に話しかけた。
「いえ、存じませんね」
「そうか……。では、ここに居るお客たちが、皆処刑対象の犯罪者というのは?」
「私はいらっしゃったお客様のプライベートには干渉いたしませんので……」
「……店主、あとで必ず弁償する」
チラッと時計を見ると、店のドアが荒々しく開け放たれ、純白の鎧で武装した騎士たちが五人入ってきた。
「貴様らは完全に包囲した!大人しく出てこい!」
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