7人が本棚に入れています
本棚に追加
狼男。人狼。今のルプスは、まさにそれだった。
「我らを侮辱した罪は重いぞ」
ルプスはそう言うと、右腕を振り上げた。その手の先には、筋骨隆々の男を一瞬で斬り裂いた爪がある。
騎士の剣よりも鋭利なその爪の前には、少女の体では、男よりも被害が大きいことは、灯を見るよりも明らかだ。
「んなっ!?」
ルプスの爪は止められていた。一本の黄金の爪によって。
「さすがは狼座……。神々の宴席の場に、人肉を献上しただけの事はある」
「き、貴様は店主!? しかも、その爪は獅子座の、星屑の獅子座じゃないか!?」
ルプスの攻撃を止めていたのは、酒場の店主だった。
「道理で只の酒場の店主が、人の死を見ても何も言わないはずだ……。お客がゴロツキばかりで慣れているのかと思ったが……、お前なら納得だ。一人で騎士団を崩壊にまで追い込んだ暴れ獅子が!」
人狼になり大きく伸びた犬歯を剥き出しにし、喉を鳴らすルプスは店主――レオを睨みつけた。
「唸るな犬野郎。獅子に喧嘩売ると、噛み殺すぞ」
右腕を黄金の毛で覆われた獅子の腕に変えたままのレオは、ルプスに負けないほどの眼光で睨みつけた。
レオの殺気で、過去を知る騎士は手が震え、まともに剣を持つことさえ不可能な状態で、少女を斬ろうとした騎士も含め、新米騎士は、膝が笑って立つことも儘ならない状態だった。
最初のコメントを投稿しよう!