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「これは?」
「俺んとこの実家で作ってある石田散薬だ。打ち身、捻挫、筋肉痛……勿論二日酔いにも効く万能薬だ。やるから飲め」
「俺、二日酔いって何も言って」
「昨日前川邸で芹沢が酒を飲んで騒いでいたことは知ってんだよ。さっさと飲みやがれ」
「石田散薬」とは土方の生家が製造、販売していた家伝薬である。
効用は言ったように打ち身、捻挫、筋肉痛の他に骨折、切り傷にも効用あるとされていた。
また、河童明神から製造方法を教わったという伝説も伝わっている。
この「石田散薬」と言えば得意な服用法で飲まれるものである。
「は、はぁ……。打ち身とか捻挫とか身体的外傷の薬が二日酔いに効くわけないと思うんだがなぁ」
「なんか言ったか」
「いえ、ありがたく使わせていただきます。」
「あぁ…。因みに水じゃなくて酒で呑め」
「はぁ!?」
二日酔いの奴に薬で酒を飲めと言った土方に思わず声をあげてしまった暁真。
この薬、絶対におかしい!と同時にも思い始めた。
だが土方は飲むようにすすめるうえに、酒は「一勺のみだ」と彼に念押しした。
「それくらいじゃ酔わねぇよ」とも言っていった。
いつの間にか持ってきてあった酒を暁真に提供する。
渋々とそれを受け取り、薬を口に入れ酒を含んだ。
ごくりと喉を鳴らせて飲みこんだ。
「すぐに落ち着くだろ」
「祈るか」
「おい。さっきの答え聞きたくねぇのか、てめえは」
「いえいえ、是非とも聞きたいですね!」
ふと、暁真は気づく。
さっきと立場逆転してねぇ?
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