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土方は机上に置いてある冷たくなっているであろう茶を口にすると、
答えを話し始めた。
まず、一と二。
組には優秀な監察方いんだよ。
そいつに調べさせたらお前の名前が上った。
それだけだ。
まぁ、お前は優秀な用心棒だったからすぐ分かったらしいけどな。
暁真は軽く舌打ちをした。
こなせる仕事をすべて完璧にこなしていたことが、己の醜態を晒した。
自分に怒りを感じているから舌打ちをした。
土方はまた紙を一枚取り出した。
「そして三だが……。もともと俺はお前に目をつけてた」
「目を?」
「あぁ。お前をあの監察方に調べさせた頃からな。その剣の腕、優れた人格、冷静沈着な性格……そしてその人間離れした聴覚。俺がもともと欲していた人材だ。」
「聴覚のことまで調べたのかよ……。しかも俺のことを過大評価。俺のことをそう評価するなんざぁ、土方歳三も落ちぶれたものだね」
「生憎、俺は人を見る目はあんだよ」
土方は薄笑いながら「その聴覚のせいで大変だったらしいぜ、あいつは」とも付け足した。
そして続きを語り始める。
「だから捕縛も連行も何も仕掛けなかった。だが、そろそろ仕掛けようとした頃合いに芹沢がお前を連れて来た。もともと欲しかった奴がのこのこと此処に己から踏み込んできた。それを利用しないわけねぇだろ?」
「それは妥当だな。って俺はこの組に……あ、帰ってきた」
暁真は何かを感知したのか廊下へ続く障子を見た。
しばらく立つと障子に二つの影が映り、開く。
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