入隊

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「すまん、待たせた」 この部屋に入ってきたのは芹沢と壬生浪士組局長近藤勇。 堅の良い体つきにこの雰囲気の大らかさ、人格者で彼は隊士全てに慕われていた。 暁真もまた、その近藤の雰囲気に魅力を感じた。 そして暁真は何故か近藤と土方の関係が気になる。 明らかに近藤と接する土方の態度が芹沢の場合と天と地ほどの差が生まれているではないか。 この男は本気で…… 近藤勇を大名に仕立て上げるのではないのか。 「その人がかい?」 「あ、はい。俺、佐藤暁真と申します」 「近藤、こいつを組に入れる」 「何を言っ」 「俺もだ、近藤さん」 否定の言葉を紡げなかった暁真は土方を睨む。 だが彼は何も怯まない。 子供の悪戯を無視をする傍観者の大人のようだ。 部屋へ入ってきた芹沢と近藤は共に土方の前に座る。 また暁真は否定の言葉を紡ごうとしたとき土方に手で口を塞がれた。 ムガムガと暁真は暴れ回る。 それを彼らは無視をしていた。 近藤を除いてだが……。 「こいつの入隊については新見、平間、平山、野口のこっちの幹部は了承済みだ」 「あぁ、入隊試験は受けてはいないがいいだろ、近藤さん?」 「構わんが…。彼の了承は?」 「「すでに得ている」」 相容れないはずの土方と芹沢は意気投合をする。 近藤は驚きはしていたが二人のことをよく知っているがため納得した。 土方と芹沢は似ているがため相反する……同族嫌悪というものだと心の底から理解しているのだ。 近藤は大きく首を縦に頷いた。 芹沢が急に動き出すと暁真の着物の襟を掴みまた引きずられる図で前川邸へと戻っていった。 それを土方は見て見ぬふり、近藤は哀れな目でみていた。
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