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前川邸の玄関から出るとさすがに暁真は地に足をつけて歩いていた。
芹沢の後ろを着いていくという形になっている。
「芹沢、お前……」
「忘れたのか、貴様は」
昨日の夜の賭け事を。
忘れたわけではない。
暁真は昨日のことが色鮮やかに鮮明に思い出される。
賭けに乗ったが組に入るつもりは毛頭もなかった。
ただ、それだけだ―――。
「儂に怒りを向けろ、憎め、殺意を向けろ、殺す機会を窺え、忘れるな貴様の憤怒を」
弧をあげて芹沢は笑った。
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