利用

3/9
80人が本棚に入れています
本棚に追加
/43ページ
先程いた部屋へ入る。 そこにはまた同じように土方が机に向かって座っていた。 「悪いな、一」 「いえ。では俺は此処で――」 「いや、いろ。お前にも話がある」 「承知した」 斎藤はそこに正座で座った。 暁真も同じようにそこに座る。 二人が並ぶと面白いほどの身長差があった。 斎藤は組の中でも身長は高い方にはいるが体は細い、土方と同じ様な体系をしている。 一方、暁真は小さい。体も小柄。顔も女顔で女に間違えられても仕方ないと思える。 それに――、目が似ている。 この二人が並ぶとまるで兄弟だ。 と土方は思ってしまった。 「昨日の事、この男に訊いたらしいな」 「あぁ。全部な」 「で、ご用件は?」 「芹沢を狙った理由だ。ただの力試しに狙ったんじゃねぇだろ?」 「それに応える義理はない」 暁真はこれ以上踏み込むなと言わんばかりあっさりと言葉を切る。 何か分ったのか土方は手を顎にあてて、一つ咳払いをした。
/43ページ

最初のコメントを投稿しよう!