利用

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「俺と佐藤を此処に呼んだのは如何のことで?」 「部屋割の話だ。佐藤は当分の間一と寝泊りを共にしろ」 「え?俺平隊士と雑魚寝でいいんだけど」 「今、用意出来る部屋がない」 きっぱりと土方はそう言った。 暁真は「なるほど」とポンと叩いて納得すると、斎藤の顔を見上げた。 相変わらず眉一つ動かさないほどの無表情である。 不服なのかそれさえも顔に出ていない。 「構わねぇな、一」 「はい」 「なんで此奴なんだ?」 問うた。 歳も離れていそうなうえに、性格も全く違う二人。 土方が二人に同室を命じた理由を暁真は気になっていた。 「お前と芹沢の賭けの話を知っているというのがまず一つ」 此奴、そこまで話したのね。 と少し斎藤に悪態を心の中でつける。 「お前らが一番歳が近いからだ」 「嘘!?此奴何歳なわけ!?」 「十九だ。何か問題でもあるのか?」 「いや、あるというか……」 詐欺だろ……。 20代かと思ってたよ。 沖田より年上だっても思ってた。 あまりにも衝撃的すぎてじっくりと斎藤の顔を見る。 何故か斎藤は顔を赤らめて、暁真から慌てて目線ずらした。 彼は目線をずらしたまま反対に質問した。 「佐藤は幾つなんだ?」 「俺?俺は、多分十八歳」 土方と斎藤は「多分」と言ったことに疑問を持った。 それに気づいた暁真は笑ってこう言った。 俺、十歳以前の記憶ないんだよ――
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