利用

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「記憶がない?」 「そう。いつの間にか長州にいて長州で育って、気づいたら剣握ってたんだよ。あぁ、そうそう。土方は俺のこと長州の間者だとか疑わねぇの?」 「……監察方に一か月もお前のことを調べさせたんだ。そこん所はきちんと調べさせてる。お前は白だ」 「随分と優秀な監察方さんで」 土方は腕を組んで自信満々に応えた「そりゃぁな」と。 いきなり彼は袖の中に手を突っ込むと文を取り出す。 その文を斎藤に渡し、後で見るようにと付け加えた。 話の終わりが見えた二人は立ち上がる。 この部屋を出て行こうとしたが、暁真は土方に呼び止められた。 「佐藤」 「ん?何」 「もう一度言っておく。お前は近藤さんを大名にするための道具にしか過ぎない」 漆黒の瞳に暁真は深く頷いた。 「俺はお前を利用する。だからお前も俺を利用しろ。その芹沢の賭けに勝つくらい協力してやる」 「それはどうも――。でも俺、賭けには一人で勝つから。それ以外の時に利用させてもらうよ」 笑うとこの部屋を出て行く。 土方は二人をそのまま部屋から見送り、ぼそりと呟いた。 お安い御用だ――。 そん時は俺もお前が嫌ってなるほど利用してやるよ―――。
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