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刹那、闇の中に一閃が煌めく。
ギリギリの所で芹沢は後ろに躱し刀を構えた。
芹沢の前にいた新見はというと、利き手を軽く斬られ刀を構えることが出来ずにただ尻餅をついていた。
芹沢はにやりと笑い、刀を振り上げる。
それを合図に剣戟が始まった。
芹沢の剣は剣客と言える剣ではない。
とても荒々しく己の性格が剣に表れているのだ。
傲慢で酒呑みのこの男は基武士としての斬り合いなんぞには興味はない。
彼は己が生きるために剣を振るっていた。
江戸で浪士組へ入隊したのもそうだった。
芹沢が下村嗣次と名乗っていた頃、水戸藩にて強引な金策、町役人への狼藉などの罪で水戸赤沼獄に投獄されていだ。
しかし、常陸水戸の第十代藩主徳川慶篤の特赦によりが釈放された。
そこで名を今の芹沢鴨と改め浪士組上洛に参加。
それは芹沢にとっての生きる手段であった。
生きてゆければいいそう彼は思っていたのだ。
芹沢は生きる執着心が人一倍強い男だった。
生きるためならば人を殺し、金策を行う。
それが芹沢鴨という男であった。
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