2.双子の過去

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「あ、あれ…私どうしてここにいるの??」 ゆっくり呟く。 「お、蒼。私、こっちの校舎に来るの、入学式以来なんだけど」 南依奈が笑う。 私、夢の中で南依奈に問いかけて、今目の前に本人がいる…。 月の校舎に……。 「なんで南依(みい)がいるの、月【ここ】に…」 「なんで?って…。蒼が休み時間に倒れたって言うから駆けつけて来たんだよ? それをさ、恰も私が幽霊みたいな言い方するなんて!」 南依奈が睨む。 「ああ、そっか…私、なんかだるくて、めまいがするなあって思ったら意識がなくなって、倒れたのか。 みんなに迷惑掛けちゃったなあ。―――次の授業、出ないとみんな心配する」 ベッドから下りかけたとき、 「ダメ。」 南依奈が止める。 「こういうのって“治ってる”と思っても、表に出たら“治ってなかった”ってことあるし。 簡単には治んないから、1日暫く寝てな。 先生には私が伝えとくから」 いつもの南依奈じゃない。 蒼奈が咄嗟に南依奈の腕を掴む。 「ねえ南依。一つ訊いていい?」 「え?」 その質問を聞いた途端、凍りつく。 「立ち直れてないから、答えられない」 南依奈が保健室を出た。 南依奈はトイレに駆け込んだ。 涙が止まらない。 「やめ…て、よ。 思い出しちゃうから…―――!」 ――――…『南依はどうやって過去から立ち直ったの…?』 答えられなかった。 答えられるわけなかった。 必要最小限の声を出して泣く。 暫くして、涙を拭い、 笑顔で月の校舎を出た。
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