第1章 最後の思い出

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 私たちは日陰の方に移動をして、私はお弁当を綾翔はパンを食べ始める。 「あ、ねえねえ綾翔。さっき先輩とすれ違わなかった?」 「ん? あーすれ違ったけど知り合いか?」 「そうじゃないけど、すごくカッコよかったから!」 「お前あんなんが好みなんだ」  綾翔は興味なさそうにパンに噛り付いている。  暑いのかワイシャツのボタンを二つくらいあけて、上着を脱いでいる。 「そんなんじゃないけどさ。なんか綾翔と正反対って感じ!」 「は?」 「なんかあの先輩、優しそうで物静かで大人で爽やかでした!」  綾翔は「ふーん」と言いながら、また一口パンを食べた。  私もそれを見てお弁当の玉子焼きを一つ口に入れる。  甘い玉子の味が口に広がる。 「綾翔だって、可愛いなぁって思う子くらいいるでしょ?」 「いねーな」 「好きな人くらいいるでしょ」 「それは……」  パンをかじるのをやめて、私から目を逸らすようにして俯いた。
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