第2章 君との別れを

41/103
前へ
/845ページ
次へ
バスはもちろん二人乗りの場所で隣同士で座る。 先輩の体温と匂いがすごく近い。 「な、なんか先輩とお出掛けが出来るなんて夢みたいです」 「ん? そうかな」 「だって……先輩とこうやって知り合えたことすら奇跡というか。とにかく嬉しいんです!」 私は手を胸の前でぐっと握る。 先輩は少しだけ照れたように笑って「僕もだよ」と答えた。 いつも降りる朝日ヶ丘を過ぎた。 今日はいつもより遠出で、あまり行ったことのない場所に、しかも先輩と一緒。 「なんか緊張してきました」 「……真緒ちゃんは可愛いね……」 先輩が小さく呟いた言葉は私には届かなかった。 それでも、先輩の小さな微笑みだけはしっかりと私の瞳に映っている。
/845ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1449人が本棚に入れています
本棚に追加