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「あ。綾翔待って。一緒に帰ろう」
「は? ああ」
「じゃ、ね。河井さん」
斎藤くんは私に手をヒラヒラと振り、綾翔の腕をつかんでそのまま廊下の向こうへと歩いていく。
その光景をチラっと先輩が見て、そして笑顔で私のところに歩いてくる。
「お待たせ。真緒ちゃん」
「あ、はい!」
先輩の笑顔に、本当のことに気づいてしまった心がチクリと痛むのを感じる。
「それじゃあ……帰ろっか」
「あ、はい……」
先輩に差し出された手を、キュっと握りしめて歩き出す。
今まで手を繋ぐのが少しだけ恥ずかしくて……でも、嬉しくて仕方なかった。
今はそんな気持ちよりも、申し訳ない気持ちでいっぱいだ。
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