第1章 最後の思い出

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「海にうつる夕日ってキレイなんだよね。私、それ見たい」 「夏休みにか?」 「うん」 「夕日見てから帰るんだと、夜遅くなるぞ」 綾翔は相変わらず日陰の中を歩きながら言った。 たまに建物と建物の隙間から射し込む陽射しに顔を険しくさせながら。 「じゃあ泊まろうよ」 「お、お前バカだろ」 「いーじゃん。昔からお泊まりしてるんだから」 私は綾翔の後ろに回り込んで、同じ日陰を歩いた。 綾翔は振り向くこともせずに進んで行く。 「外泊禁止だろ。高校生だけの。親も許さないって」 「じゃー遅くなってもいいから夕日見に行こうよ」 「……わかったよ」 綾翔はボソッとそう言うと、ピタッと足を止めた。 そして振り返った。
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