第1章 最後の思い出

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綾翔より高い建物の上から、太陽の陽射しがはみ出していた。 「なに?」 「……あのさ……」 「うん?」 綾翔は何だか口ごもっていた。 何かを言おうと口を開いては閉じてを繰り返した。 「どうしたの?」 私がそう聞くと、綾翔は開きかけた口をまた閉じて前を向いてしまった。 「まだ、いい」 「……そう?」 「また、今度……言いたくなったら言うから」 綾翔は私に背を向けたままそう言った。 少しだけ見える綾翔の顔は夕日のせいなのかほんのり赤かった。 それから家につくまでの間、私たちは他愛のない話しをした。
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