第1章 最後の思い出

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綾翔は結構優しい。 意地悪そうに見えて、本当は周りをよく考えている。 薄暗くなっていたからなのか、綾翔はわざわざ私の家の前までついてきてくれた。 「じゃあな。また明日」 「うん、送ってくれてありがとうね! 優しいんだからっ」 すると綾翔は、いつもは見せないようなやわらかい笑顔を浮かべた。 「お前のためじゃねぇよ」 その言葉の意味がわからなかった。 私は聞き返そうと思ったけれど、すぐに綾翔は背を向けてしまった。 「あ、綾翔っ」 「話があんならあとで電話かメールでしろ。じゃな」 綾翔は軽く手を上げてヒラヒラとすると、すぐに歩いて行ってしまった。 少しの間、小さくなっていく彼を見送ってから、私は家の中に入った。
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