1449人が本棚に入れています
本棚に追加
/845ページ
綾翔は結構優しい。
意地悪そうに見えて、本当は周りをよく考えている。
薄暗くなっていたからなのか、綾翔はわざわざ私の家の前までついてきてくれた。
「じゃあな。また明日」
「うん、送ってくれてありがとうね! 優しいんだからっ」
すると綾翔は、いつもは見せないようなやわらかい笑顔を浮かべた。
「お前のためじゃねぇよ」
その言葉の意味がわからなかった。
私は聞き返そうと思ったけれど、すぐに綾翔は背を向けてしまった。
「あ、綾翔っ」
「話があんならあとで電話かメールでしろ。じゃな」
綾翔は軽く手を上げてヒラヒラとすると、すぐに歩いて行ってしまった。
少しの間、小さくなっていく彼を見送ってから、私は家の中に入った。
最初のコメントを投稿しよう!