第1章 最後の思い出

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終業式が終わり放課後、斎藤くんと佳奈は用事があるからと学校に残った。 今日は私と綾翔だけの放課後。 どこに寄るでもなく、私たちは家へと歩いた。 「夏休みかぁ……勉強がないのは嬉しいけど、みんなに会えないのは寂しいなぁ」 「遊びに誘えばいいじゃん」 「そうだけど……みんな予定ぎっしりだから。綾翔くらいしか暇な人いないんだもん」 「人を暇人みたく言うなし」 綾翔は軽く私の頭をコツンと叩いた。 私は「いたーい」と言いながら頭を両手でおさえたが、綾翔は無視して歩いた。 「綾翔暇なら遊ぼうよ」 「海行くだろ」 「それとは別にだよ」 私は家の陰をなぞるように歩いた。 綾翔はいつもと変わらず、日陰の中を歩いていた。 なんとなく、明日から夏休みだと思うと憂鬱で……。 私たちはあまり会話もなく、いつもの別れ道にたどり着いてしまった。
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