第1章 最後の思い出

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私たちは近くにあった喫茶店の中に入った。 「先輩はよくここら辺に来るんですか?」 「うん、そうだね」 先輩は店員さんが持って来てくれた水を少しだけ飲むと、にっこりと微笑んで言った。 私たちは冷たい飲み物しか頼まなかったので、すぐに出てきた。 「のどがかわいてたから……冷たくて美味しいね」 「はいっ」 それにしても先輩と向かい合っているなんて……すごくドキドキしちゃうな。 私の周りってうるさいバカばかりだったから……なんかこんなに静かな大人って感じの男の子って新鮮かも。 なんて綾翔と斎藤くんに言ったらいじめられそう。 「あ、そうだ真緒ちゃん」 「はいっ?」 「後でアドレス教えてくれないかな」 先輩はまた穏やかな笑顔を見せた。 「も、もちろんです!」 「よかった……」 「私なんかのでよければ何でも教えます!」 「あははっ、真緒ちゃんって何だか可愛くて癒される感じ」 先輩の言葉に一瞬ドキッとした。 か、可愛いとか……。 はじめて言われたかも。
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