第1章 最後の思い出

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バス停につくと、この前のことを思い出した。 「綾翔、この前屋上で見た先輩と会ったんだよ」 「ふーん」 「しかも真緒のこと覚えてくれてたんだっ」 「へーえ」 綾翔は興味なさげに相槌をうっている。 それでも私は、綾翔にこの前の出来事をたくさん話した。 どんな話をしたとか、笑顔がかっこよかったとか。 「お前、本当にあんなのが趣味なんだ」 「そ、そういうわけじゃないよ。綾翔だって可愛い爽やかなスタイルのいい女の子を見たら惚れちゃうでしょ」 「そんなことねーよ」 今まで興味なさそうにしていた綾翔が真っ直ぐな目で私を見てきた。 一瞬、いつもと違う綾翔の顔に心臓が大きく音をたてた。 そのうち海行きのバスが来て、私たちは乗り込んだ。
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