第1章 最後の思い出

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 でも、この調子だともしかしたら遊びに連れていってくれるかもしれない。  綾翔ってばなんだかんだ言って優しいんだから。 「綾翔のために可愛い服買っておいてあげるねっ」 「おー、期待しとく」  綾翔は頬杖をつきながら歴史の教科書に落書きを始めた。  今の返事って……OKサインだよね?  めんどくさそうにする綾翔を見ながら私はワクワク感を感じていた。 ――そして、不意に綾翔が落書きをしている場所を見てみる。 「……信長さんって、こんなに髪の毛ありましたっけ」 「夢を叶えてやったんだよ」 「ふっさふさだね! きっと天国で喜んでいるよっ」 「昔にも育毛剤があればな」  普段のこんな何気ない会話がとても楽しい。  いつまでも……――いつまでもこのまま楽しければいいのにだなんて。  叶わない希望を抱いていた。
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