第1章 最後の思い出

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綾翔は一回私を睨むと、両手で水をすくってかけた。 私は綾翔よりも多くなるように水をかけて……と、しばらく続けた。 二人でぷかぷかと海の上に浮いていると、夕暮れが迫ってきた。 空が段々とオレンジになり、海と太陽がくっつきそうなくらいに近くなっていた。 海も藍色からオレンジへとかわる。 ついに念願の夕暮れの海だ。 「太陽大きい……綺麗だね綾翔!」 私はいつものように軽い返事が返ってくるんだろうな。 と、思っていた。 ……でも……。 「ああ、綺麗だな」 綾翔がはじめて言った。 私が綺麗だと言うものに対して綺麗だと。 私は嬉しくて微笑んだ。
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