巽パパの場合

63/72
前へ
/331ページ
次へ
「まあ、色恋沙汰は他人が口出すものでは無いけど」 キャンディーを机に置きながら、和也は言う。 出してんじゃないか、と巽は益々不貞腐れる。 何度も言うが、顔には一切出ていないが、かなりいじけている。 それが解るのは、この場では和也と光、忌々しい美原の3人のみ。 「まああの2人にも、無条件で学校行事に協力してもらわなければならないが、基本は――」 和也はザッと、皆を見渡す。 「『マスコット』を擁護する事にある」 和也は手短に語る。 ① なんぴとも、『マスコット』に悪意を持って近付いてはならない。 ② 忠告を無視すれば最悪、退学処分もある。 ③ 生徒会・学校側の双方で『マスコット』を護る。 「今の所、学校側と取り決めた大筋はその程度で更に――」 「会長」 スッと手が挙げられた。 文化部長の3年の女子だが、巽は名を知らない。 「何かな、下村さん?」 和也はにっこり微笑み、問い掛ける。 下村と言うのか、そう思いつつ巽は彼女を見据える。 「それは一生徒を特別扱いする事になり、他の生徒から不満が出ると思うのですが?」 尤もだ。 巽も彼女――下村に同感だ。
/331ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加