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「でも、違ったんだよな……」
そんなちゃちな事じゃなかった。
和也は真剣に、本気で、綾乃を愛したのだ。
そして綾乃もまた、総てを投げ捨ててまで、和也を愛したのだ。
反対なんか、するんじゃなかった。
いつも、後悔だけが巽を包む。
だが……
先日、和泉から渡された和也の手紙を読んで、変わった。
後悔は要らない、と。
そうだ、和也は何時だって、前を見据えていた。
決して振り返らない、後悔するくらいなら反省して先に活かす。
巽が大好きな親友は、そう言う奴だった。
そして和也が愛した綾乃も、前向きなタイプだ。
前向き過ぎるが。
そんな2人の子供。
和美は恐ろしく前向きで、後悔なんて言葉自体持ち合わせない娘だ。
綾乃にそっくりだ。
そして和泉……
我が家の風変わりな三男と気が合った和也の息子は、これまた恐ろしく風変わりだった。
風変わりで、優しい。
そして、可愛い。
何でだろう?
携帯の中で笑う和泉の、幼い姿を見詰めて、巽も笑った。
和泉は謎だ。
あの摩訶不思議な性格は、多分綾乃に近い。
皆を大切に思う心は、2人のもの。
気遣いは、和也似。
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