巽パパの場合

70/72
前へ
/331ページ
次へ
ごちゃごちゃぐちゃぐちゃ、和泉は混ざっている。 巽が大好きで憧れだった和也と、大嫌いで苦手だった綾乃の、良い所も悪い所も全部が和泉の中に入っている気がした。 「和泉は、本当に2人の子供なんだな」 今更ながら、実感する。 和美は綾乃が強すぎて、和也を感じさせない。 しかもこの兄妹は、バラバラに幼児期を過ごしたらしい。 和泉は伊織と、兄弟の様に育てられたと聞いている。 ああ、そうか。 「伊織も混じってんだな」 そう言えば、雪ちゃんぽい点も、和泉には見られた。 「和泉、虹みたいな性格してんだなぁ」 皆が混ざってら、と巽は笑う。 自分の性格も混ざっていると、嬉しいんだが。 「なあ和也」 窓の外の紫陽花に目を向け、巽は呟く。 「お前の大切な家族、色んな人達に支えられてるぞ」 だから、 「安心しろ」 呟いて和泉の携帯を閉じる。 閉じて、オヤッと思う。 高校時代の和也と今の和泉を思い浮かべ、 「やっぱり似てねーぞ!?」 叫びながらキッチンに飛び込み、炊飯器の蓋をあける。 モワンと湯気が立つ。 食欲そそる、良い香りがする。 今夜はパエリアだ。 🐤🐤🐤終
/331ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加