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「食べたって、十合……一升炊いてあったでしょ!?」
「美味しかった♪」
にっこり答える巽に、和泉は頭を抱えた。
「いっちゃん」
不安気に、孝哉が和泉を呼ぶ。
夕飯が無い。
いや、一品消えた。
溜め息ついた和泉は、ハッとしてもう一台の炊飯器に取り付く。
パカッと開いた炊飯器。
ほんわか良い匂いが漂うこちらは、無事だった。
「さすがに二升は食べられなかった!」
げふっと、巽は言う。
その腹は、パンパンに膨れている。
「んもう! パパは夕飯要らないね!!」
しょうがないとばかりに和泉は、買い置きしておいた栗ご飯の素を取り出し、米を研いでセットする。
他のオカズと合わないが、仕方ない。
「栗ご飯なら食べる!」
巽の宣言に、和泉はまたも溜め息をつく。
「パパ、いい加減にしないと太るよ?」
「だいじょーぶだー、パパは絶対太らなーい♪」
歌い出す巽に、尊が布巾を投げつけた。
「パパ、最低!!」
あははは、と笑いながら、巽はキッチンから消えた。
妙な巽の鼻歌が、徐々に遠ざかって行く。
🐤🐤🐤🐤🐤
夕飯時、誰よりも早く巽がテーブルに着いていた。
おわり
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