綾乃の場合

9/54
前へ
/331ページ
次へ
そのままわたしの視線の先を追い、物凄く苦い顔をするちっさい副委員長。 「成瀬、か」 ぼそりと、吐き捨てる様に、副委員長は言う。 「成瀬?」 わたしの呟きに、黒岩が反応した。 「あ? 和也がどうした?」 和也? 成瀬 和也? あれ? 聞いた事が有るぞ? 「え、生徒会長さんが、どうかされました?」 そう雪ちゃんが言って、わたしも思い出した。 そうだ、生徒会長が確かそんな名前だ。 みんなで見上げる窓には、もう生徒会長の姿は無い。 「相変わらず、か」 黒岩が、雪ちゃんに視線を戻してそう言った。 「この際、とっても嫌ですが、お二方の事は生徒会も交えて、相談するべきですね」 副委員長の提案に、わたしも雪ちゃんも首を傾げた。 「お二方共、腕に自信がおありでしょうが、このままで言い訳が有りません。 いつ不測の事態が起きるかわからないですし、お二方が怪我でもされては、西木戸高校の損失にもなりますから」 そう言って、副委員長はわたしを見た。 わたしよりちっさいから、下から覗き込む様に、だけど。 んと、なんだ?
/331ページ

最初のコメントを投稿しよう!

177人が本棚に入れています
本棚に追加