綾乃の場合

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「内緒か?」 訊けば、副委員長は苦笑する。 「憧れ、です。 彼は、僕のヒーローですから」 「憧れ?」 ええ、と副委員長は頷く。 「知り合い方からして、ヒーローの登場シーンみたいだったので」 「わたしは、悪役の登場みたいに見えたぞ?」 わたしから雪ちゃんを奪う悪役だ、黒岩は。 「僕は、神楽坂さんのヒーローにはなれませんか?」 「無理」 即答したら、苦笑した。 「神楽坂さんは」 「副委員長は先輩だから、呼び捨てで良いぞー!」 「ならば、綾乃さんと――」 「呼び捨てじゃない!」 「神楽坂、で?」 「副委員長なら、綾乃で良い」 副委員長は、ちょっと困った様な顔したけど、直ぐに頷いた。 「では綾乃、貴女にとって彼女はどんな存在ですか?」 黒岩と幸せそうに話し込む雪ちゃんを、副委員長はじっと見詰めながら、そう訊いた。 「雪ちゃんは、女神様! わたしを外の世界に連れ出してくれた、恩人なんだ」 だから、幸せでいて欲しい。 いつも、笑っていて欲しい。 「綾乃は、彼女のヒーローになりたいのかな?」 うん、女だけど、ヒーローになりたいな? わたしは頷いた。
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