尊の場合

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「起立、礼」 先生の号令に合わせて、 「さようなら」 とみんなが声を上げる。 「忘れ物はしないように。 気を付けて帰るのよ!」 そんな先生の声を聞きながら、ぞろぞろと教室を出て行くくらすめいと達。 を横目に、僕は和泉ちゃんに、ロック オン! 頑張れ、尊! 頑張って、声を掛けるんだ! バクバク言ってる心臓を押さえながら、僕は和泉ちゃんに視線を合わせた! 「おばさんの所まで、ランドセルは俺が持って行くから」 そう言って和泉ちゃんのピンクのランドセルを、美原君が持ち上げた。 「すまんの~」 にへら、と笑って和泉ちゃんは言う。 「早くでかくなれ」 無茶な美原君の命令に、やっぱり笑う和泉ちゃんが、ふっと、僕の方を見た。 よ、よし! 今だ! 今、話し掛けるんだ! と、頭でわかっていても、ずっと他人と話していなかった僕は、行動に移せない。 情けない! だけど、仕方無いんだ。 でも、和泉ちゃんとお話ししたい! ぐるぐるぐるぐる頭も心もわやくちゃになってる僕を、スッと和泉ちゃんが指差した。 「おともだち!」 微笑みながら、天にも昇りそうな言葉を口にして。
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