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「ねぇ未来………未来ってば!!」
耳をつんざくような大音声に私は、はっと意識を取り戻した。
「もう…うるさいなあ。」
私は顔をしかめながら、その大声の主に文句を言う。
「未来が聞いてないから悪いんだよ!私、何回も呼んだのに!」
―栗栖未来
それが私の名前だ。
『みらい』と読まずに『みく』と読むのが何とも現代風だが、私はこの名前が嫌いだった。
今流行りのボーカロイドとか言う人工音声ソフトの某キャラと同じ名前だから………
というのも少なからず理由のうちに入るが、それが全てではない。
私には到底、未来というものが存在しないのだ。
何も余命があと一ヶ月とか、死ぬ運命が見えているとか、そんな話しではない。
私はよくこう考えるのだ。
人生は全く同じ時間の繰り返しでしかない。
毎日、毎日同じことを同じ時間に同じ場所で同じ人間と過ごす。
何の変化もない毎日なら、果してそれは人生と呼べるだろうか?
例えそれを人生と呼ぶのだとしても、私はそんな人生は嫌だ。
生まれてから死ぬまで同じ日常の連続なら、今すぐにでも人生に区切りをつけたいものだ。
死ぬのは怖いが、毎日を死にながら生きてる感じがして、そっちの方がよっぽど怖い。
死にながら生きる。
いつだって死んでいる。
私には未来がない。
だって死んでいるのだから。
そう、だから私はこの『未来』という名前がどうしようもなく嫌いなのだ。
「未来ってば~!!」
またあの金切り声で意識が戻る。
小さい頃からこうなのだ。
何かに意識を集中させると、集中しすぎるあまり、何も聞こえなくなる。
「分かった分かった。聞いてるから。」
「聞いてないじゃん!私がさっき言ったこと言ってみてよ!」
心の中でため息を吐きながら、重々しく口を開く。
「ごめんさくら、もう一回言って。」
「ほらぁ聞いてない!未来に話しかけるのやめちゃうよ!」
そう言って私の友達、安達さくらは腕を組んで、元から無いに等しい胸を張る。
私以外に趣味の話しができる友達いないくせに、と言ってやりたかったが今回はぐっと我慢した。
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