始まりは唐突に

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  「今日から新学期か」 あたし、巳城侑里は校門の前でふとつぶやく。 なんか実感がわかない。 今年から高2になるけど、クラス替えがある程度。特に一年と変わらない気がしてしまう。 校門を抜けると大きな人だかりができていた。クラス発表の張り紙にあつまっているらしい。 あたしはその人だかりに躊躇なく突っ込むと、張り紙の前にしゃしゃり出た。 「巳城侑里、みしろ……あった。2のAか」 ついでに、嫌いな奴の名前確認も忘れない。 「葉月澪人、はづき……、あるし!最悪」 葉月澪人とは、この学園で、アイドル的な存在の人気者男子。あたしは、あいつの誰にでも優しいところが怪しくて苦手なんだ。 しばらく張り紙の前で友達のクラスをチェックしていると、澪人とそのファンクラブの女子たちが登校してきた。 「澪人さま」 「澪人君」 人によって呼び方は様々。 あの人たちの気持ちも分らなくはない。 この、新杏子丘高等学園は、最近まで女子高だったため、男子の人数が女子の三分の一しかいない。 だからこそ、かっこいい人なんて数少ないわけで。 そしたら、容姿端麗で誰にでも優しい澪人に、ころッといってもおかしくはないのだ。 人だかりから何とか抜け出すと、澪人とはち合わせた。 「あ、おはよう。巳城さん」 キラッきらのスマイルで澪人はあいさつ。それとは反対に、 「おはよう」 の一言で、そっけなく教室に向かうのがあたし。 「なんでそんなに冷たいのよ、侑里」 友達のメグちゃんが登校してきた。昇降口で、腕をからませてくる。 「おはよう、メグちゃん。クラスの張り紙見た?」 「見たよ。またあんたと違うクラス。っていうか、なんで葉月くんに対してそんな態度なわけ?」 だって、いつもにこにこしてて、何考えてるか分からなくて……ちょっぴりこわいんだよ。 だけどメグちゃんには報告できない。決定的な証拠がないからだ。   しかし、あたしはその日の放課後、とんだとばっちりを受けてしまう……。
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