バイト先でも

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「ただいまぁ」  その日の放課後。あたしは澪人に家まで送ってもらった。  でも特に話すことなんてなくて、会話に詰まっていたら家に着いてしまった。 「なんか、もやもやするなぁ」  あたしは部屋でそうつぶやく。  澪人は今日、すごく真剣に、何かを考えているようだった。 「侑里、おかえり」  有馬がノックして入ってくる。  あたしは、ただいまの一言も言う気力がなかった。 「疲れたよ、有馬」  あたしはため息をつく。 「そりゃ、あんな男と付き合うフリなんて、疲れるにきまってるじゃないか」  分かり切ってることだよ、と有馬は話しながら参考書を侑里の本棚から抜き出す。 「それより、兄さんが話があるって言ってたよ。  たぶん、店の話だろうけど」 「お店?」  お兄ちゃんは喫茶店の店長を若くしてお父さんに任されている。  そんな彼から、何の話だろう?
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