85人が本棚に入れています
本棚に追加
「ただいまぁ」
その日の放課後。あたしは澪人に家まで送ってもらった。
でも特に話すことなんてなくて、会話に詰まっていたら家に着いてしまった。
「なんか、もやもやするなぁ」
あたしは部屋でそうつぶやく。
澪人は今日、すごく真剣に、何かを考えているようだった。
「侑里、おかえり」
有馬がノックして入ってくる。
あたしは、ただいまの一言も言う気力がなかった。
「疲れたよ、有馬」
あたしはため息をつく。
「そりゃ、あんな男と付き合うフリなんて、疲れるにきまってるじゃないか」
分かり切ってることだよ、と有馬は話しながら参考書を侑里の本棚から抜き出す。
「それより、兄さんが話があるって言ってたよ。
たぶん、店の話だろうけど」
「お店?」
お兄ちゃんは喫茶店の店長を若くしてお父さんに任されている。
そんな彼から、何の話だろう?
最初のコメントを投稿しよう!